笑顔の追求に
妥協はしない!
とことん楽しむ!
北区 介護老人福祉施設 カトレア鈴蘭台
北区鈴蘭台、高台に広がる住宅街の一角にある「介護老人福祉施設カトレア鈴蘭台」は、職員主導でさまざまなユニークな行事に取り組んでいる。
行事の様子や取り組みに至った経緯などを、フロアリーダーの高原美由起さんと生活相談員の津川雅行さんにお話いただいた。
取材に伺ったゲンバ
きっかけは 入所者、職員が共に
笑顔になり施設が盛り上がる行事を行うことだった
笑顔になり施設が盛り上がる行事を行うことだった
高原さんカトレア鈴蘭台がオープンしたのは、2017年10月です。はじめの1年くらいは、入所者も少なく、職員もなかなか定着せず何もできない日々でした。でも、今できることは今しよう。とにかくやってみよう。と、手探りで動き始めました。
津川 雅行さん(左) 高原 美由起さん(右)
津川さんうちの施設長は発想が豊かで特に食についてはこだわりを強くもっています。食の楽しみは人として共通の幸せだと。管理栄養士が一緒に調理(お好み焼きやパン作り)を行ったり、できたて熱々を食べていただいたり、生活するうえで当たり前であることを大切に行事を考えていきました。もちろん失敗も沢山あり、反省を繰り返す中で、色々な職員からも、もっとこうしよう!おもしろいことをしよう!という声があがるようになりました。
高原さん入所者から「たまには晩酌したいなぁ。」という声があがり、職員もいいですね!となりました。晩酌のアテと言えば、「焼き鳥食べたいね」「おでんもいいな」と、とんとん拍子に企画が決まりました。
施設で酒類を提供するのはタブー視されることもありますが、カトレア鈴蘭台では、施設の常識は世間の非常識を合言葉に、きちんと専門職の視点で、ご家族の意向、入所者の希望を取り入れた行事計画書を立てました。
介護施設にありがちな、仮装や被り物など職員の自己満足ではなく、とことん追求して夜に居酒屋を開店しました。
私たちは、入所者の希望をひとつでも叶えられる場所でありたいと考えています。
施設で酒類を提供するのはタブー視されることもありますが、カトレア鈴蘭台では、施設の常識は世間の非常識を合言葉に、きちんと専門職の視点で、ご家族の意向、入所者の希望を取り入れた行事計画書を立てました。
介護施設にありがちな、仮装や被り物など職員の自己満足ではなく、とことん追求して夜に居酒屋を開店しました。
私たちは、入所者の希望をひとつでも叶えられる場所でありたいと考えています。
居酒屋の店内をイメージした行事当日に提供されたメニュー
施設にいるからあきらめるではなく、
できることを考える。
できることを考える。
高原さんやはり居酒屋を行うならとことん追求したいですよね。居酒屋をイメージしたお品書き、昭和レトロなスナック風、赤のれん街を連想した装飾、ハワイのイメージでアロハフェスティバルなど。一つひとつコンセプトをたてることが成功の秘訣です。職員からの発想を大切にし、もちろん入所者にもお話をお聞きします。「昔の居酒屋は、どんな雰囲気でした?」「原色のネオンがいっぱいあったよ。」「ホッピーも懐かしいね。」など。原色のネオンはクリスマスツリーのライトを使用し、入所者の思い出を聞いて再現できるよう手作りで準備しました。嚥下機能が低下されている方にも楽しんで頂けるように、言語聴覚士も巻き込んで実施しました。
昭和の、のれん街をイメージした行事の様子
津川さん行事のあとは、入所者から「昔は毎日晩酌をしていたけどなぁ。」「久しぶりに飲んだわ。今夜はよく眠れるわ。」など感想をいただき、普段はお口からの飲食を制限されている方が、行事をきっかけに少量ですがトロミを付けた飲み物を飲まれました。今ではゼリー食も食べて頂けるようになっています。それをお伝えするとご家族も喜んでいただき、次の行事のときには差し入れなど協力をしてくださるようになりました。
高原さんもちろんお酒だけでなく、ご家族手作りのポテトサラダや、ばら寿司が食べたいなど希望をお伝えしてくれる方もいらっしゃいました。実現するためにご家族にも参加いただき、最期の思い出の一品になりました。私たちのお仕事は、入所者とご家族との橋渡し役でもあると考えています。後から後悔しても遅い。今できる時にやることが大事だと気付かせていただきました。
津川さん食事以外にも、施設には大変見晴らしのいい屋上があるので、元旦に初日の出をみるのが恒例行事になっています。北区の冬は寒いので、早朝から管理栄養士が熱燗や甘酒を用意し、防寒もしっかり行いご来光を拝んでいます。
高原さんある日突然、「屋上からの夕日がきれいだからみんなでみにいこうぜ」と相談員が言い出すこともありました。この時は思いつきなので計画書もなかったのですが、施設長に相談すると安全配慮をきちんとすればOKと許可が出たのですぐ準備しました。ところが、夕日がきれいな時間は夕食の時間で、職員も忙しい時間。それでも、入所者が喜んでくれるならという想いで行いました。あの日の夕日は忘れられません。
夕日を眺める入所者の皆さん
独自の行事は施設の強みになり、
職員のモチベーション向上にもなった。
職員のモチベーション向上にもなった。
津川さん介護の仕事をしていて、これはダメとか、そんなの無理に決まっているとか、言ってしまえば話が終わってしまいます。試行錯誤の連続でしたが、成功を重ねることで、どんどん良いひらめきができる。それがいまカタチにできていると思います。
高原さん意外性のある行事を追求していく中でも、感染対策をきちんと行いコロナ禍でもできる行事を追求しました。新人職員にも行事をまかせ、成功体験を積んでいただく機会にしています。
ピンクが好きな職員にならって、ピンクに統一したコーディネイトでサービスを提供。
津川さんカトレア鈴蘭台では、これからの介護業界を見据え、選ばれる施設になっていかないといけないが合言葉になっています。行事企画を通じて、入所者、ご家族が笑顔になってくださる。そして、働く職員も楽しい。その事実を日本中の求職者の方の目に留まるよう、SNSを使って発信しています。採用サイトも一新しました。ぜひ、一度見てください。
介護業界では見たことがないようなサイトになっています。
介護業界では見たことがないようなサイトになっています。
津川さん職員向けの採用サイトでも普通の紹介をしても面白くないよね、という話になって、『やっていこーぜ』をキャッチフレーズに、世の中の人が見たくなるサイトにしました。
高原さん今後も「ひらめき」を「かたち」に。柔軟なアイデアが活きる行事に取り組んでいきます。ブログなどを通じ、ご家族へも笑顔をお届けしていきたいです。個人的に実現してみたいのは、故郷のお墓参りへの旅行企画です。今しかない時間づくりを共有させていただきたいです。