介護ではたらくみんなを応援! コウベ de カイゴ

外国人と
いっしょに支える、
介護の未来とは。

兵庫区 報恩会 本部研修センター

業界の人材不足から、そのニーズが年々高まる外国人介護職員。
2000年代から率先して受け入れ、外国人のための研修施設をつくるなど、外国人介護職員を積極的に雇用する社会福祉法人報恩会理事長・奥野 和年さんに話を伺ってきた。

取材に伺ったゲンバ

報恩会 本部研修センター<兵庫区>
介護福祉養成研修や職員研修、また外国人介護職員への研修、学生就職相談及び東南アジア諸国の大学への介護技術講義などを行う。

法人HP

きっかけはハローワークから、
外国人の就職を相談されたことだった。
社会福祉法人 報恩会が外国人介護職員の採用をはじめたきっかけは、ハローワーク神戸から外国人の就職受け入れ先になってほしいという相談だった。そのころは中国からの留学生がほとんどだったそうだ。

受け入れるために、まずはお話をするじゃないですか。すると彼らは中国から日本に来るときに借金をしていることを知ったんです。

教育目的にも関わらず、話を聞いたほとんどの方が仲介業者に借金をしてお金を払って日本に来ていた。とくに地方出身者が多く、日本での生活は苦しい人がたくさんいた。

神戸は国際都市なのに、こんなことでいいのかという疑問がありました。そのうちにEPAや技能実習制度などができて、東南アジアからも技能実習生を受け入れたのですが、やはり多くが同じような状況でした。うちは小さな施設ですけど、なんとか救えないかと思い、手探りの状態からはじめたのがきっかけですね。

取材でお話いただいた奥野和年さん

高齢者は認知症の方も多いので、多少話せなくても、自分に優しい人には好意的でした。それを見ていて、これなら外国人でも仕事にすることができるな、と確信がもてるようになりました。

多くの外国人にとって障壁となる日本語の習得は、介護の仕事においては大きな問題ではなかったと奥野さんは振り返る。奥野さんの献身的なフォローから外国人職員は徐々に定着するようになった。

苦労して働いてきた外国人職員が役職につきだして、現場で教えてくれたり、同じ国の人同士で助けあったりするようになりました。日本人職員ともわだかまりがない。そういう雰囲気になりました。

資格取得をめざして勉強に取り組む外国人職員

研修と海外へのアプローチ。
その両輪で外国人職員の人材確保を。
外国人職員の採用が軌道乗り出した時、『他の施設も同じように悩んでいるのではないだろうか?』という想いが奥野さんの中で芽生えた。

聞いてみると、うまく受け入れられない、どう教えていいかわからないと言うんです。だったらノウハウはあるので、うちで研修したらいいということになり、この研修センターができました。

リモート講義での外国人職員による実技デモンストレーションの様子

外国人のための研修だけでなく、日本人の職員のための初任者研修も実施しています。現在はリモートの講義が中心ですが、ベッドなどの器具を用意しており、講義を受ける施設にもインストラクターがいるので動作を見せながら研修をしています。

他施設の外国人職員育成をサポートする目的ではじまった「報恩会 本部研修センター」では今、兵庫県内で働く外国人職員の研修を行なっている。

各国の言語に翻訳された介護のテキスト。翻訳は報恩会の外国人職員が行った。

研修を受け入れるようになる3年前から、京阪神の施設とともに介護人材を確保するためのプロジェクトをベトナムではじめた。

いっそ現地に行ってしまおうということではじまりました。看護大学にアプローチしたのですが、むこうでは介護という言葉すらない状況でした。だから介護も大事ですよ、と知ってもらうことからのスタートでした。

こうしてはじまった現地での講義は、今ではフィリピンでも開催されるまでになり、日本で働く外国人職員も教鞭をとっている。
外国人といっしょになって。
日本の介護をもっと良くしたい。
介護職をめざす外国人に、外国人職員が教えるメリットは言葉だけではないと奥野さんは語る。

やっぱり私たちに言えないことってあるんです。たとえばベトナム人同士では話せても、日本人の先生には言いにくいこともあります。それなら先生が同じ国の人の方がいいと考えました。

同郷のリーダーや先生に話してもらえる環境をつくり、意見や悩みを聞き取って、それを研修でフィードバックしていくそうだ。

研修の中では介護技術以外にも労働環境や制度、東南アジアの国々との社会保障制度のちがいも教えています。

外国人職員の中には医療費が高いと思い、病気や怪我をしても病院に行くことを拒む人もいるそう。そういった人たちにきちんと制度を教え、生活をサポートすることも奥野さんは行っている。

兵庫県に委託された外国人職員eラーニング事業以外はほぼ手弁当だったと笑いながら奥野さんは語る。どうしてそこまで献身的に支援するのか?と尋ねてみた。

私の中では日本人の方が、外国人が、という区別はないんです。ただ、大家族で育った外国人はやさしいですね。会話が苦手な人もいますが、みんな一生懸命です。
私がしたいことを助けてくれる、大きな存在ですね。

「今後、施設職員の2割は外国人でないと、運営は難しくなると思います」と、奥野さんは警鐘を鳴らす。そのための目標は神戸市に介護に特化した支援センターをつくることだそうだ。そしてもっと外国人職員をサポートし、人材獲得をつなげることで、これからも利用者に介護サービスを提供する。奥野さんの挑戦はまだまだ続く。