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ロボットや
リフトなどの導入で
働く人にも
やさしい現場へ。

北区 特別養護老人ホーム 六甲の館

緑豊かな六甲山地の麓にある「特別養護老人ホーム 六甲の館」。
こちらの施設では、人のチカラを使わない移乗を行うノーリフトケアに取り組んでいる。
さらにロボットやリフトなど、最新のテクノロジーも積極的に導入する現場について、施設長の溝田 弘美さん、現場職員の大崎 恵美さんに教えていただいた。

取材に伺ったゲンバ

特別養護老人ホーム 六甲の館<北区>
「心からのおもてなし Best Hospitality」を理念に、利用者の方々に安心して快適な日々を過ごしていただけるよう、特別養護老人ホームとショートステイの2つのサービスを提供。

施設HP

職員にもやさしいノーリフトケア。
溝田さん私はもともとアメリカに住んでいたことがあって90年代後半のITで進化する社会を体験したこと、パソコンが好きだったこともあり、施設長になってから積極的にICT化を行ってきました。

溝田 弘美さん(左) 大崎 恵美さん(右)

溝田さんノーリフトケアを知ったのは10数年前です。業界紙で見て興味をもったのがきっかけですね。リフトは、利用者さんをベッドから車椅子へ、車椅子から浴室へ運ぶ福祉機器で、六甲の館では各部屋と、浴室に設置しています。

専用のシートで利用者さんの体をつつみ込むようにして、リフトにつなぎ、ベッドと車椅子間を移乗します。
大崎さんですので、六甲の館では利用者さんを人力で絶対抱えません。もともとは私たちの職業病である腰痛をなくすことがいちばんの目的で、もちろんその効果はありました。でも今では褥瘡(じょくそう)、皮膚剥離や内出血といった利用者さんの症状も減りました。

利用者さんって人が近づくと身体にチカラがはいるんです。ブランコみたいに吊りあげられるとリラックスしたまま持ち上げられるので、筋緊張や拘縮が緩和されるという効果もありました。

リフトを使って、ベットから車椅子へ移乗する様子。

溝田さんベッドから車椅子、車椅子からベッドへの移乗って、実はすごくスキルのいる介助技術なんです。六甲の館では外国人の職員も多いのですが、アジアでは高齢化が進んでいないため、寝たきりとか介護の意味を知りません。
大崎さんだから介護を学ぶのと同時に介護技術も習得しなくてはいけないので大変だったのですが、移乗はリフトの使い方さえ覚えてしまえばすごく安全で、私たちも安心して任せられるようになったことも大きなメリットですね。
効率化だけでなく
人にできないことをロボットに。
溝田さん機械面で言うと、5分浸かるだけで身体が洗える入浴介助装置ピュアット、テント式の装置でベッドの上で入浴ができる介護入浴装置ナノミストバスも設置しています。

これらを導入するのは施設の充実はもちろん、業務効率化、生産性を向上することで、そのぶん研修や職員の時間をつくりたいからです。

現場ではロボットも活躍しています。アザラシ型のセラピーロボット「パロ」はすごく認知症の方に効果があります。
大崎さんいろいろな鳴き声をするので、利用者さんにとっては犬や猫に見えたり、別の利用者さんには赤ちゃんに見えたりする場合もあります。ほどよく鳴いてくれて、ほどよく動くんですよね。あたたかくて、重量もあるので、利用者さんが思う生き物になってくるんですよ。

パロとふれあう利用者の方

溝田さんパロの導入を考えている時に、利用者さんから犬を飼いたいと言う声がありました。動物が苦手な方もいるし、安全面や衛生面を考えてもロボットの方がいいという結論になりました。
大崎さん利用者さんのなかには介護を拒否される方もいます。そんなときパロを置いて、穏やかになったところで声かけすると、お手洗いやお風呂などに行ってくださることがよくあるので、とても助かっていますね。

あと現場にはペッパーくんもいて、六甲の館では利用者さんのカラオケに使っています。よく使う方には専用のプレイリストを用意して、みんなで一緒に順番に声出して歌ってらっしゃいます。人が相手だと歌いにくい方もいますし、いっしょに歌ってくれるので、とても人気です。職員がずっと見守らなくてよくなりましたし、ロボットは職員を助ける存在になっていますね。

ペッパーくんにはレクリエーションをするプログラムも導入されている

認知症介護を楽しくするために。
これからはデジタル技術をもっと導入したい。
溝田さん今、施設でいちばんの最新の設備は車椅子を自動洗浄する機械です。車椅子をそのまま入れるだけでピカピカにしてくれて、70分で乾燥までしてくれます。食べこぼしなどで、車椅子洗浄をする必要が多い方がいらっしゃいましたので、とても助かっています。
大崎さんベット柵とか椅子とかも洗えるので、便利です。車椅子は日中必ず使うので、夜に洗うことが多いのですが、人の力でやると全部はできません。おひとりおひとりに合わせたものを使っているのですが、洗っているから使えないということはなくなりましたね。
溝田さん車椅子のメンテナンスはノーリフトケアの一環なので導入しました。洗浄する時間がなくなった分、これまではタイヤやブレーキなどのチェックに興味のなかった女性職員も積極的にメンテナンスしてくれるようになりました。

車椅子を洗浄する機械

溝田さん最近は神戸市介護テクノロジー導入促進プロジェクト ※のマッチングで、ある会社さんと出会ったことで知ったデジタルセラピーに興味をもっています。

認知症の高齢者はタブレットなんて使わないと頭ごなしに言う人もいますけど、六甲の館の利用者の方は好きな方が多いです。
大崎さん1人が見始めたら皆さん見たい、見たいって言うんです。赤ちゃんや料理、昔の歌手の映像を見てらっしゃいますね。
溝田さん今はまだネットで探した国内外のセラピー動画を見ていただいているだけですが、認知症の方のためのデジタルセラピーの動画やプログラムをつくりたいです。タブレットが1人1台あれば、それで楽しく過ごせるっていう環境ができればと思います。そしてデジタル技術を使って、もっと認知症の方の介護を楽しくしたいですね。

※「神戸市介護テクノロジー導入促進プロジェクト」
介護サービス事業所・施設等を対象に、介護テクノロジー機器導入に関する相談対応や、
機器貸し出しの支援、機器体験会やセミナーを実施している神戸市のプロジェクト。
https://www.kobekaiteku.jp/